
私が十数年前、下関市に住んでいた頃の出来事です。
当時新聞配達のバイトをしていたのですが、一軒だけとても嫌なお客さんがおりました。
なぜかと言うと、通常の配達順路を大きく外れている上、鬱蒼とした森の中の長い坂道の突き当たりにある、3方を塀に囲まれた家で、しかもそこの配達時間は午前3時位でしたので、いつも暗く不気味な雰囲気がとても怖かったのです。
8月のある日、いつものように嫌だなあと思いながらその家へ配達に行くと、小さな男の子が塀の上に乗って遊んでいます。
「こんな時間になぜ?」
と思いましたが、塀の高さは1m程でしたし、家の窓からは明かりがもれていたので、
「きっと夏休みだし、どこか出かけるんだろう。親御さんの出かける準備がまだできず、外で遊びながら待ってるのかな」
ちょっと危ない気もしましたが、早い時間に家族で出かけるのは私の小さい時もワクワクしたっけなあ。懐かしいなあなどと、気楽に考えていました。
その男の子は幼稚園年長ぐらいで、塀の上に立っては向こう側に飛び降りて、また上ってきて、というのを淡々と繰り返していました。
219名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・投稿日:04/06/08 19:49ID:R+jHbrlD
その日はそれで何事も無く配達し終えたのですが、次の日、その次の日もその男の子は塀の上に立っては向こう側へ飛び降りる遊びをずっとしているのです。4日目になるとさすがに、
「ねえ、こんな時間に何してるのかな?危ないよ。お父さん、お母さんは?」
と塀に立った時に声を掛けてみました。すると男の子は無言でいつものように向こう側へ飛び降りました。
「あっ!!!」
男の子が飛び降りた塀の向こう側を見て死ぬほど驚きました。
なんと、こちら側からは1m程のただの塀ですが、向こう側は崖(海)になっていて、しかも下の方から「ザザー」と波のような音が聞こえてきます。
高さも暗くて良く見えませんでしたが、軽く10mはありそうです。もちろん、男の子は影も形もありません。
振り返ると今まで点いていた家の明かりも消えて真っ暗になっていました。私は恐ろしくなって無我夢中で逃げ帰りました。
220名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・投稿日:04/06/08 19:50ID:R+jHbrlD
販売店に着いて所長にそのことを話すと、
所長「お前どこに配ってるんだ?そこはうちの配達区域じゃないじゃないか!」
私「えっ、でも順路表にはちゃんと。」
と配達に使う順路表を見てみると確かにあったはずのその家の項目は空欄になっていました。
「もう良いからとりあえず今日は帰れ」
所長に言われてその日はそのまま帰宅しました。
家に帰ってからもどうしても納得がいかず、怖かったのですが明るくなってからならと思い、お昼頃その家に行ってみました。
明るいうちに行ってみてもなんか不気味なその家は表札も無く、庭には雑草が生い茂っていて、窓ガラスも所々割れていて、とても人が住んでるようには見えませんでした。
例の塀の向こう側を覗いて見ると、崖になっていて、高さ10mは確実にありそうでした。下は岩場で波が叩きつけています。やはり海でした。
よくよく見ても、子供がつかまれそうな場所はどこにもありません。ふと、真下の岩場に白いものがあるのに気が付きました。
白い花の花束と、私の配った新聞が岩場に散乱していました。
転載元:死ぬ程洒落にならない話を集めてみない?75
コメント
コメント一覧
不気味だけど、ちょっと幻想的で好きだなぁ
塀の向こうが家だと思うじゃないか
振り向いたら真っ暗・・・なんか想像しちゃった、こわいよう・・・
それに、長い坂を上った頂点が海抜10メートルという事は、坂の登り口の標高は海面以下? もう少し舞台設定を考慮した方がいいように思います。でも、恐怖感は充分に感じられました。
出版されてる小説でもそこまで細かく描写してないのが多いよ。
さては、あまり本読んでないでしょ?
でも落ちたら死ぬような民家のそばの崖にたった1mの塀を作るかねえ?
>3方を塀に囲まれた家
に毎日新聞を(『毎日新聞』をという意味ではない)配っていて
その家の周りの地形(大まかにでも海岸線がどうなっているのか)が分からないのは不自然
まぁ順路もなかったことになっちゃう程なら気付かないようにされてたってのもあり得るか
よっぽど新聞が読みたかったんだねぇ
だったら新聞代を玄関にでも置いておけば『私』が明日からも新聞配達してくれたのに
…無理か(笑)
両親が旅好きなので、遠出をする時は必ず真夜中に出掛けてました。
「早い時間に家族で出かけるのは私の小さい時もワクワクしたっけなあ。」というお気持ち
良く分かります。
その日車に乗り込んだ時までは 凄くワクワクするんだけど、そのうち眠たくなってきて寝ちゃうんだよね。
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