暗い、ぬいぐるみ

533名前:
その1投稿日:03/09/06 15:10
ちょっと長いんだけど。

オレが小学生だったころの話なんだが、妙にボロイ借家に住んでいた時期があった。

当時、両親が離婚をしたこともあり、子供とはいえ精神的にアレだった気がしないでもないけどね。

急に苗字が変わった事もあり、小学校で軽いイジメのターゲットとなったオレは、放課後のドッジボールやサッカーに参加するわけにもいかず、1人まっすぐ帰宅するのが習慣になりつつあった。まぁ鍵っ子ってやつ。

いつものごとく借家(2階建て)の鍵を開け、自分の部屋(2階)へ直行したオレは作りかけのミニ4駆の製作にかかった。

しばらくすると日も沈み、腹も減ったしTVでも見ながら食事をとろうとした時にソレは起きました。

トン、トン、トンと階段を駆け上る音がする。家の中にはオレしかいないのに。


534名前:その2投稿日:03/09/06 15:11
その音は普通に階段を駆け上るのとなんら変わらず、ゾっとするのと同時に、もしかしたら母親が仕事から戻ってきたのかと思わせるくらいに普通でした。

しかし足音はオレの部屋の前で止まり、硬直して動けないオレの前でふすまはそっと動いた。

…立っていたのは母親ではなく、見知らぬ同年代の女の子。3秒ぐらいお互いに言葉を交わすでもなく、見つめ合っていたと思う。

女の子はくるっと後ろを向くと、階段をトン、トン、トンと降りていった。

怖いと思うよりも、あっけにとられていたオレは、泥棒なのか何なのか分からず、放心状態だったけど、部屋にあったプラスティック製のバットを片手に、とりあえず1階に降りようと思った。


537名前:その3投稿日:03/09/06 15:12
階段を何故かそっと足音を忍ばせながら下りるオレ。頭の中は混乱してたけど、それなりに色々と可能性を考えていた。

1.実は母親はもう戻ってて、知り合いが来ている。

2.実は家賃を滞納してるかなんかで、大人の人が怒りにきた。

3.鍵をかけ忘れたから泥棒が入ってる。

と、まぁこんな感じだったと思う。でも1階に降りて玄関を確認すると鍵は閉まっている。

家の中はシーンとしている。声もしない。

1階はリビングと台所(繋がってる)風呂、トイレしかないので、いるとすればリビングだろうな…と思った。


539名前:その4投稿日:03/09/06 15:14
このあたりから、何とも嫌な感じがし始めていたんだけど、それでもそっとリビングを覗いてみると…何とも奇妙な光景がそこにあったんだよ。

日も暮れて暗い部屋の中に、明かりもつけずにテーブルに向かって座っているサラリーマンと女の子。

こちらに背を向け台所に立っている女の人。皆、一言もしゃべらず、微動だにせず、じっと下をうつむいてた。

気がついたらオレは母親に抱き起こされ、しきりに

「大丈夫?大丈夫?」

と揺すられてた。どうも廊下でぶっ倒れてたらしいんだよね(苦笑

見たことや、起こった事は全て実感として覚えてたけど、親には言えなかった。頭がアレになったと思われる要因が、オレの環境には揃いすぎていたし…

なにより住む場所がなくなるかもっていうのが嫌だった。

あの家で、かつて何があったのかなんてコレっぽっちも知らないけど、当時母子家庭の母親が、1人で借りられる2階建ての借家なんて…まぁ何かあった家だったのかも。





転載元:死ぬ程洒落にならない話を集めてみない?