山

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本当にあった怖い名無し[sage]投稿日:2009/12/11(金)19:36:53ID:YjqDqA5tO
私が小学校低学年の頃だからもう15~6年前の話です。

私の実家はド田舎にあるのですが、家の裏手に山があります。あまり人の手も入っておらず、私はよく犬の散歩で山のふもとや、少し入った山道を歩いていました。

梅雨が明けて暑くなりだした頃だから7月だったと思います。いつものように山道に入っていくと犬が急に走りだそうとするんです。

よし、じゃあ走ってみようか!って一緒になって走って気が付いたらいつもより険しい山道に入ってしまったようでした。

15時くらいに家を出たので、まだ明るい時間帯のはずなのに、山の中は薄暗く不気味に感じました。元来た道を戻ろうと引き返し始めると、途中で道が途切れてしまいました。

かなりデタラメに走り回ったから場所も方角もわからなくなってしまったわけです。少し涙目になりながら、それでも下に下に降りていけば山からは出られると思い、草だらけの道なき道を犬と一緒に降りていきました。


957:本当にあった怖い名無し[sage]投稿日:2009/12/11(金)19:37:48ID:YjqDqA5tO
しばらく山を下りていくと段々と周囲が明るくなり夕焼けの色の空が木々の合間からのぞきます。

こんなに時間がたっていたのか、早く帰らないとお母さんに怒られる、そんな事を思いながらさらに山のふもとを目指しているとトンネルの脇に出ました。トンネルの向こうからは夕焼け色の光が見えます。

人工物を見つける事が出来て安心した私は、そのトンネルを抜ければどこか知っている道に出られると思い、トンネルの中を犬と一緒に走りました。

トンネルを抜けるとそこには緩やかな盆地に作られた町のよう。家が沢山あり、夕焼けが屋根を照らしています。

こんな町があったんだなぁ、と少し興奮しながら山のふもとに下りる道を聞こうと私は町へ向かいました。


958:本当にあった怖い名無し[sage]投稿日:2009/12/11(金)19:38:38ID:YjqDqA5tO
トンネルから町に入る道の右に民家があって、少し離れた場所から道の左右にズラッと家が並んでいるのがわかります。

町に近付きながら誰かいないかな、と思っていると、トンネルから一番近い民家からおじさんが一人出てきました。

犬を連れた私が近づいてくるのを見て笑顔であいさつしてくれます。私もあいさつを返した後、ふもとに下りる道をたずねました。

おじさんは不思議そうな顔で「君が今来たトンネルを抜けてそこから山道を下ればふもとに出られる」と教えてくれました。

この町を抜ける道を聞きたかったのですがまぁいいかと思い、礼を言って引き返そうとすると、おじさんが私の名前をたずねてきました。

私は山の近くに住んでいます〇〇です、と答えると、おじさんは納得したような顔でうなずきながら「ここら辺は夜になると野良犬がうろつくから早く帰った方がいいよ」とトンネルを指差します。


959:本当にあった怖い名無し[sage]投稿日:2009/12/11(金)19:39:24ID:YjqDqA5tO
私は再度礼を言ってトンネルに引き返しました。

途中で振り返るとおじさんが私を見ながら手を振ってくれたので、私もお辞儀してから手を振り返しました。

トンネルに入る前にもう一度振り返るとおじさんはまだ家の前にいたので、また手を振りながらトンネルに入りました。

そこからトンネルを抜けて山道を下っていくと周囲がさらに明るく開けて山のふもとの知っている道に出ました。

今日は歩き回ったね~なんて犬に声を掛けながら家に帰る途中で、まだ夕日が照っていない事に気付きました。あれ?とか思いつつ家に帰り着いたのは16時半くらいでした。

家に帰ってから母にその日の冒険の事を話すと「そんな町あったんだねぇ」と不思議がっていました。

夜になって父親にもその話をしましたが「山の中にそんな町あるわけない」の一点張りで、さらにあまり山の中でウロチョロするなと軽く叱られました。


960:本当にあった怖い名無し[sage]投稿日:2009/12/11(金)19:40:13ID:YjqDqA5tO
私はもう一度その町に行こうと思ったのですが、トンネルも、そのトンネルからふもとに下りた道も見つける事が出来ませんでした。

その年のお盆、家族や祖父母と一緒に墓参りに行きました。それまでに数回おとずれたことのあるはずの墓地を見た瞬間、妙なデジャヴを感じました。

なだらかな丘に道がありその左右に墓が並んでおり、そして墓地の入り口から一番近い墓が私の実家の墓です。

当時の私はそれを理解してから本気で泣きました。理由を聞いて祖母が

「そのおじさんにしっかりお礼言わなきゃね」

とお墓を磨かせてくれました。あの時のおじさんの顔はぼんやりとしか覚えていません。しかし最近歳をとった父親の顔を見ると、こんな感じの顔だったなぁなんて思います。

あまり怖くなくてすいません。

ただ、もしそのおじさんに出会わなかったらを想像すると今だに私は怖いです。