
心霊系じゃないけどマジで命の危機を感じた経験。
去年の年末の話。俺が務めている部署に新入社員が一人入ってきた。中途でね。洒落たメガネをかけた今時の青年だった。
俺が教育係を任されたんだけど、仕事は凄い出来るのね。俺入社3年目なんだけど、俺の1年目とは比べ物にならないくらい出来る。こりゃーいいのが入ってきたわーって部署内で喜んでたんだ。
で、そいつが入社して1週間たった休み明け、風邪で休むと連絡があった。今年は糞寒いし、しょうがないかなーって感じで特に気にもしなかった。
けど、それから毎週月曜日必ず休むのよ。4週連続でね。本人に理由問いただしても「腹痛持ちで」とか「風邪で」ってごまかすのよ。
若いし、一人暮らしはじめたばっかりと聞いてたから楽しくて日曜遊びまくって起きれねえのか?とか単に月曜病なのか?とか聞いたけど、「すいません」と謝るばかり。仕方ないから、
「今度休むときは病院行った証拠持って来い」
って少しきつ目にいって済ませたのね。
けど次の週明けも休みやがった。けど、休んだ日が休んだ日だったので理由が何となく特定できた。
こいつが休んだの12月25日。クリスマスの日だったのね。「あぁ、女だな」って確信した。
こちとらクリスマスに恋人となんかしばらくご無沙汰なのに、あいつは新人のくせに会社サボってイチャイチャかい。と、怒りがこみ上げてきた。半分以上僻みだけどね(笑)
しかも、今回は無断欠勤だ。会社もさすがに新人のくせになんだこいつってなって、俺にアパートへの突撃指令が出た。で、履歴書に書いてあったアパートに向かったのよ。
けど、チャイム押しても出てこない。電話にも出ない。そりゃそうか、真昼間だし女と出かけてんのか。と思ってどうするか考えてたんだけど、ふとドアノブに手をかけてみると回った。
ドアの隙間に顔入れて覗いて見たんだけど、昼間なのにカーテン閉め切ってるのか奥が暗くて見えなかった。
「おーい、〇〇?いるのかー?体調悪いのかー?」
みたいな感じで声かけてみたんだけど返事はなし。ふと(もしかしてサボりじゃなくてマジで体調悪くて連絡できなかったんじゃないのか?)
って思いが頭によぎった。3連休明けだ。もしかしたら最悪の事態もあるかもしれないと思い、俺は悪いと思いながらも部屋に入ったんだ。
で、部屋に入って明かりつけたらビックリした。女がコタツで座ってんのよ。うぉ!!って変な声だして飛び上がったんだけど、よく見たらその女人形なのね。
しかも超精巧な。正面から見なかったら人形ってわかんないくらいの。男の部屋に等身大の人形っていうのも変な話だけど、コタツの上がさらに変なのよ。
クリスマスケーキにフライドチキン、その他料理にワイングラス。まるで恋人がここでパーティーしてたみたいな感じだった。(こいつ…。変な性癖もってんのか…?)
ココら辺でもう変な汗タラッタラ出てきた。
その時、部屋のドアが開いた。あいつだった。新入社員がそこに立ってた。
「おーい、楓(かえで)ー。帰ったよー」
これで確信した。こいつやべえと。変な性癖とかそういう次元じゃなくてやべえと。
「…。先輩。何してんすか?」
会社では見たことのないようなすっげー冷めた目で、新入社員が俺を見てた。会ったらぶん殴ってやるわ、とか思ってたけどそんな気持ちはすでにぶっ飛んでた。
「い、いやー、お前が会社来ないからさ、心配で…」
「楓が風邪引いちゃったんですよ。これから電話するところでした」
「か、楓…?か、可愛い彼女だね…」
怒らせちゃまずい。話を合わせて乗り越えるしかない。もう背中は冷や汗でびっしょりだった。
「それに人の部屋に勝手に入って非常識なんじゃないですか?あれですか?俺が戻らなかったら楓に乱暴するつもりだったんじゃないですか?」
「い、いやいや。に…そんなことするわけないでしょ…」
「人形に」って言葉を必死で飲み込んでた。
「嘘だ…。お前も俺から楓を奪おうとすんだろ…」
踵を返して台所に向かう新入社員。あ。やばい。そいつの部屋は2階だったけど関係ない。俺は窓を開けてベランダから一階に飛び降りた。
「まてやあああああ!殺す!楓を奪う奴はぶっ殺すからなああああああ!」
上から新入社員の今まで聞いたことないような怒号が聞こえてた。
「待ってろ!殺してやるからなあああああ!」
ドアが開く音が聞こえた。もう脇目もふらず走って逃げた。叫びながら。
「誰かああああ!!助けて下さいいいい!!」
田舎だったのが不幸だった。人影はまったくない。これはマジで死ぬんじゃないかと思いながら20分くらい走った。性格に何分走ったのかは覚えていない。
携帯の着信で我に返ったんだ。上司からだった。振り向くと誰もいない。俺はホッとして電話に出た。
「新入社員が警察に捕まった。どうなってんだ?」
みたいな内容だった。聞くと包丁持って道を歩いてたところをパトロール中のパトカーに職質されたらしい。俺の名前出して殺す殺すと言ってたので、これはやばいということで警察が連行したそうだ。
その後、上司に迎えに来てもらい、新入社員の家に靴を取りに戻り、警察に行った。警察署で今までの経緯を話した後、新入社員は入院することになるって話を聞いた。
そっち系の病気だそうだ。当然、新入社員は解雇になった。
こんなことが年末起きました。顔から血の気が引く時ってホントにサーって感じの音がするんだね。
厄年の最後にこんなことが待ってるとは思いもしなかったよwお祓いしたのにさ。
コメント
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お祓いの効果があるのは創作怪談の世界だけの話ね。あ、これも創……。
新人君の彼女はオリ〇ント工業製のラヴドールだったのでしょうか? そんな物、はした金では買えませんが、入社したての新人君がそんな大金をどうやって手に入れた? まあ、学生時代に一生懸命アルバイトをして貯めたのだと言うなら分かりますが、そういう点も説明が欲しい所です。
新人君は、仕事は大変にできるのに一方で危険な趣味を隠し持っていた。そういう二面性は、どんなに隠してもふとした機会に外部に出そうですが、新人君は優秀な男だったので巧みに隠しおおせた。それなら納得できますが、正体を知られたとたんに狂気をむき出しにして自分の異常性が露見するのも構わずに包丁を振り回すのは、”ちょっとした馬鹿話” 程度なら構いませんが、現実味と言う点では瑕疵でしかありません。
また長くなりそうなので、最後に一つだけ。「お前 ”も” 俺から楓を奪おうとすんだろ」。新人君は、この時以前にも同じような事件を起こしているらしく見えますが、よく警察沙汰にならなかったものですね。
最近湧いてなかったのに・・・
厄祓いしてなかったら姿は針刺しかナマス、三面記事に載ってたな。
特に可動域のヒザや肘など。ビミョーに怖いね。
埼玉の八潮にドールの館があるらしいけどなんか面白そうだよ。
中途入社って書いてるヨ。よくお読みになって。
あと警察沙汰云々の話は、もしかしたら既に警察沙汰になってたかもしれないね。だからこそ田舎に引っ越してきたのかも。
けれどもその辺は実際には分からない。
創作であれ実話であれ、語り手が語ること以外は分からないんだから行間読んで楽しもうヨ。
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