
2014/10/05
僕が通った中学は田と山に囲まれた田舎にあった。
2年の春、A教師が赴任してきて担任となった。赴任当初、彼はとても穏やかな性格で面白かった…1ヶ月後オリエンテーションで数キロ離れた寺院に遠足にでかけるまでは。
それはとても暑い日で寺までの道のりはきつかった。寺は山の奥にひっそりとあった。到着するとぼくら生徒は喉の乾きと足の疲労で地面に腰を落として休んだ。
ふと本堂に目をやると、端に天狗のようなものが立っていた。天狗のようなものだが何者かわからない。とにかく髪が長く、顔が赤く和装な変な奴。天狗はこちらをじっと睨んでいた。
となりにいた同級生のUに変な奴がいるぜ、と話しかけようとすると天狗は威嚇するようにこちらに走ってきた。
僕は怖くて目をつむって伏せたが背中を強く蹴られた。振り返るとそこにいたのは天狗ではなく担任Aだった。顔が真っ赤なA。
何がなんだかわからなかった。Aはそのまま絶叫した。怒り出して叫んでいる。しかしあまりに興奮していて何を言っているのかわからない。
突然背中を蹴られて不満な僕が彼を睨みつけた。とんだキチガイが担任になってしまったとがっかりしたが、天狗のことはすっかり忘れてしまった。
Aは社会科の教師だった。遠足の一件以来とてもキレやすい教師になった。穏やかで面白い状態からキチガイにスイッチがはいる。
キレたときは生徒は黙ってやりすごすしか手はない。帰りのホームルーム時にまたキレているA。やれやれと右手の廊下ごし窓の外にある森に目をやる。
いた。
天狗だ。
窓に張り付いている。
恐怖とともに初めてAが切れたときの記憶が蘇った。前に目をやるとAはハサミを持っていた。
「いいか!ここを切り裂けば赤い血が流れているんだ。みろ!」
と言って左手の袖をまくり腕にハサミをたてていっきに縦に切り裂いた。悲鳴をあげる生徒。そのあとの記憶はあいまいで憶えていない。
A教師は3年になっても相変わらず担任だった。Aがキレたときは奴を睨みつけていた。しかしAとは目があわなかった。
卒業式の日、体育館の窓の外に天狗がみえた。Aはみるみる顔が赤くなり般若のような顔つきとなった。隣にいたUに
「A見てみろ!またキレルぜ」
と耳打ちした。Uとは仲がいいわけも悪いわけでもなかったが、話したりする縁はなかった。あの2年の遠足以来だった。するとUは
「お前やつにキレられたことねーだろ、いーよなー」
僕は
「バカかよ、2年の最初むっちゃ蹴られたじゃん」
反論する僕にUは言った。
「何言ってんの?あのさ、Aはお前蹴飛ばしてねーよ。突然倒れたお前助けただけだろ」
卒業して数年後、Uが亡くなった。崖から落ちたそうだ。葬儀でAをみた。彼は近寄ってこなかった。
お盆。
祖父の弟が毎年線香をあげにくる。あいさつにいくと顔を紅潮させて怒り出した。なぜ怒りだしたのかは憶えていない。帰途、彼は特急に飛び込み亡くなった。
今、この町には田と山と朽ちた家々しかない。誰もが町を離れ、年老いた人がひっそりと暮らしている。
そして今年母が逝った。
僕もこの町を離れようと思う。
離れる前にAと会うつもり。長い間、僕のことが怖かったのかききたかった。

コメント
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天狗の仕業じゃ!!
実話なら聞いてから書けばいいだろ・・・
創作欲から油断して小説風に締めちゃうパターン
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