赤

15/02/20
中学校の頃の話。心霊体験じゃないけど恐怖体験で、実話。

うちの地元は田舎の農業地帯でほとんどの家が農家だった。人口が少なくて学校は1学年に1クラスのみ。小学校と中学校が同じ校舎の中にあって「〇〇小中学校」て名前だった。

ある年、私が小学校入学からずっといた司書のおばさんが定年退職した。次に来る先生はどんな人だろう?ってみんな楽しみにしてた。

新年度の新任紹介で登壇したのは若い女性の司書さんだった。黒っぽい服装に黒髪、色白で大人しそうな先生だった。自己紹介コーナーでも、他の新任の先生が趣味や特技を言う中

「〇〇です。よろしくお願いします」

と、司書さんは小声で一言だけだった。

その後、さっそく小学校の後輩たちが図書館に行って司書さんを質問攻めにしていたんだけど、司書さんはなんだかボンヤリしていてうつろな表情。

子供たちの質問にもろくに答えず、はい…はい…とあいまいな返事。

私も友達と一緒に図書館に行ったけど、なんか変な先生だねwと子供たちに囲まれる先生を見て、本だけ借りて帰った。

それから一週間くらいかな?担任の先生がホームルームで

「図書室の〇〇先生は、今日からお休みです」

と発表した。

生徒が「なんで?」と聞くと「体調不良だそうです」と回答。新任早々風邪でもひいちゃったのかな?と、その時はみんな深く考えなかった。

しかし、一週間たっても二週間たっても司書さんはお休みのまま

「もしかして大変な病気なんじゃないか?」

とか

「そういえば、顔色が悪かった!」

とか、田舎だから話が広まるのも早くて、みんなの噂になっていた。

図書室の担当は、生徒の保護者で司書の資格を持っている人が司書さんの休職中だけ代理を務めることになった。

そんなこんなで一ヶ月もたつころには代理の人の方が皆になじんでしまい、司書さんのことは忘れつつあった。

で、5月の下旬くらいだったと思うんだけど、親の手伝いで畑の小石を取り除く作業をしてたら、近くにあるアパートから司書さんがフラフラ出てくるのが見えた。

あれ?司書さんだ…と思ったけど、司書さんは全身びしょ濡れでただならぬ様子だったから、声をかけるのをためらってしまった。

そのまま石拾いの作業をしていたらアパートの方から

「ア”――――――!!!」

というものすごい悲鳴が聞こえてきた。振り返ると人が燃えながら地面を転がりまわっていた。私が叫ぶより前に父と祖父が駆け寄ってアパートの消化器で火を消そうとした。

「消防呼べ!」と指示されて母が近所に駆け込んで電話してたと思う。

私はぼうぜんとして燃え盛る司書さんを見ていた。司書さんは、最初は叫びながらジタバタもがいていたけどだんだん声が聞こえなくなっていって、最後には動かなくなった。

炎は消えたけど司書さんは丸焦げになっていた。消化器の粉っぽいにおいと、髪の毛が焼ける臭いがひどかった。

田舎だから消防車と救急車はなかなかやってこなくて、私はトラクターの中に避難させられた。騒ぎを聞きつけて周囲にちょっとした人だかりができてた。

次の日は学校だったけど休んだ。
友達に聞いた話だと、先生からは

「司書さんがお亡くなりになりました」

って簡単に発表があっただけだったらしい。

でも焼身自殺なんてショッキングな出来事が広まらないわけがない。みんな本当は司書さんは自ら灯油をかぶって火をつけて死んだことを知っていた。

しばらくして、司書さんは元の勤務先の学校を精神病でやめたとか、転任先がうちの学校になったのは田舎で環境がよくて子供たちも素朴な子ばかりだからだった、とか噂を聞いたけどそれが本当かどうかはわからない。

かれこれ10年以上前のこと。未だに我が家ではタブーになってるし、同窓会なんかでもその話題は禁句だ。

ニュースで焼身自殺とか引火事故で死亡とか聞くたびに思い出す。あの時の叫び声は一生忘れられないと思う。

あんまり怖くなくてごめん。
おわり