中国

11/09/30
まじ話です。

全く関係ありませんが私のスペックからいきます。28歳 独身♂

半年前まで仕事で上海に住んでいました。上海には日本と中国間での材料のやり取りをするための貿易会社として事務所があるだけで、工場は上海の隣町の某市にありました。

私は当時、輸入・輸出及び工場側の品質の管理を任されていたため、某市と上海を行ったり来たりしながら3年間程中国で暮らしていました。

赴任当初は某市にある工場の方で品質管理の勉強をしていたため、実質中国の思い出はほぼ某市の方にかたよっています。その某市での体験を書かせて頂こうと思います。

某市には、上海同様日本人がたくさん駐在しており日本人街の様になっている場所もあります。

週末になると日本人街で食事をしたりお酒を飲んだりして遊ぶのですが、そういう所には日本人客目当ての裏DVD屋や、小銭をせびりに来る中国人がたくさんいます。

中には盲目の人を使い、ニコと呼ばれる楽器を演奏させてお金をもらおうとする人までいます。

そんな中でも日本人の数が圧倒的に多く、警察もうろうろしているため安全なので私も週末にはよく街に出て遊んでいました。

そんなある日、酔った勢いで裏DVD屋からDVDを買った事がありました。そのDVD屋のおっちゃんも人柄が良く、フレンドリーに接してくれるため、その後も会えばあいさつをし、かたことの中国語で会話する関係になっていました。

DVD屋のおっちゃんは荷台付き自転車でDVDを売りながら移動しているのですが店も構えており、店の方ではタバコや酒なども販売していました。

その店には小さな子供が3人と、店の奥には無口なおっさんが一人いて、子供達の面倒はその無口なおっさんがみていました。

私は週末のたびに日本人街へ繰り出していたため、毎週末このDVD屋のおっちゃんには会っていて、2週間に1回は店のほうにも顔を出しており、子供達や無口なおっさんも私には大分親しみをもってくれていたと思います。

そんな生活を1年ほど送り、2年目からはこの某市と上海を行ったりきたりする生活が始まりました。

某市と上海を1週間のスパンで行ったり来たりする生活でしたので、次第に某市の日本人街に行く回数も減っていました。

行ったり来たりの生活を1年半ほどしている内に、某市の工場に新しい品質管理の担当者が派遣される事になり、私は上海のみの担当になりました。

某市の生活ともお別れになるので最後の1週間は某市で遊びまくってやろうと思い、平日でも日本人街で遊んでいました。

最後にDVD屋のおっちゃん達にもあいさつをしておこうと思い、その店を訪ね、皆にお別れとお礼を言うと皆も、せっかく仲良くなったのに残念だ…と言ってくれ、別れを惜しみ合いました。

この時、奥にいた無口なおっさんが居なかったので、彼はどこいったの?と訊ねると、こっちで働いてお金が溜まったので故郷に帰ったという説明を受けたので、まあ最後だが仕方ないか…と、店を後にしました。

その後、上海の仕事に没頭し某市での暮らしも記憶から薄れていき、中国3年間の任期を無事果たしました。

私は某市と上海の両方で働いていたため、送別会は両方の会社からやってもらえる事となり、某市側での送別会の際に再びあの日本人街に足を踏み入れる事になりました。

最後に日本人街に行ったのは、DVD屋のおっちゃんの店にお別れを言いに行ったのが最後だったので、半年ぶりの日本人街に少しわくわくしていました。

半年ぶりの日本人街に浮かれながらも、無事に送別会は終了。

以前から仲の良かった某市工場の工場長(日本人)と二人でスナックで飲む事になり、どの店に入ろうか~と、一直線に300m程ある日本人街をうろうろして可愛いお姉ちゃんのいそうな店を物色していました。

今さらですが、この日本人街は真っすぐ伸びて、道の両側にスナックやら飲食店がずらーっと立ち並んでおり、時々右や左に抜ける細い抜け道があるくらいで基本的には1本道。

この通りの要所要所に最初の方で書いた、小銭をせびりに来る人達が様々な方法でお金をもらおうと必死になっています。

この小銭せびりの人たちは、色々な手段で日本人からお金をもらおうとします。小さな子供を利用し花を売りつけに着たり、目の見えない人の楽器演奏、大ケガをしている人をつれてきては治療代等…

これは有名な話ですが、この乞食の人たちは個人個人でお金せびりをしているわけではなく、元締め的な存在がおり、夜遅くなると迎えが来てどこかへ皆まとめて帰って行きます。

そしてまた次の日の夕方くらいから各自の縄張りへと戻されるわけです。

この乞食の元締めがどういう存在なのかは分かりませんが、小銭をせびりにくる人達の目は必死そのもので、笑顔等ほとんどありません。

話を戻しますが、こういう乞食の人たちをうまく避けながら店を物色していると妙に違和感のある乞食の人が目に止まりました。しばらく見ていると工場長から

「最近あいつよくいるよ、怖いからあんま見んな」

と言われ、何が怖いの?と聞き直すと「見た目がやばい」という回答がありました。

私の感じる違和感の原因や、見た目がやばいという言葉がどうしても気になり、その乞食さんを近くで見たい衝動に駆られ近づいてみる事にしました。

そしてその乞食の人を見た瞬間、なんか背筋が凍るというのか、目の前が真っ白になるというのか表現しきれませんが絶句しました。

あのDVD屋のおっちゃんのとこにいた無口なおっさんが乞食になっていました。

ただ、無口なおっさんがただ乞食になっていただけなら、お金溜まったんじゃなかったの?事業失敗したか~?くらいの軽いノリで話しかけることができますが、この時、私は言葉も出せず一緒にいた工場長の方を見ることもできないくらいのショック状態で、じっと変わり果てた無口オッサンを見ていました。

何がどう変わっていたかと言うと、両足はかなり上の方(腰くらいの様に見えた)からなくなっており両目も潰れ、手の指も数本しか残っていない状態で白い布か包帯の様な物がところどころ巻かれており、この状態で生きてられるのか…という姿になっていました。

この姿でスケボーの様な、板にタイヤがついた台車に乗せられ、ちょこんと歩道の隅でじっとしていました。オッサンの乗る台車の前には金属製のお皿が置いてあり、2,3枚の硬貨が入っていました。

あまりのショックで一気に酔いも冷め、とりあえずあのDVD屋のおっちゃんの店をたずねる事にし、その場を離れました。

店のあったはずの場所に行くも、店はすでに改装され印鑑屋?石を彫って印鑑を作るところに変わって店主も変わっており、全く違う店になっていました。

ですが不思議な事に店の奥には前の3人いた子供のうちの二人がいて、私にニコニコしながら手をふってくれていました。

事情を聞こうと思い近づいて話かけましたが、新しい店主は子供に「おい、奥にいってろ」と言い、会話をさせてくれませんでした。

しかたなく店を出て、無口おっさんのいる方向にはどうしても行く気になれなかったので、ホテルに帰りホテルのロビーのBARで軽く飲んで寝ました。

なぜ子供だけ店に残ったままなのか、なぜ子供が1人いないのか、無口おっさんに何があったのか…色々と分からない事はありますが、私は無口オッサンが単なる事故でああなったとは思えません。

真相は詮索もしません。知りたくもないですが…

※大して怖くなくてすみません。個人的にはすごく怖い体験だったので書かせてもらいました。

本当に実話です。