崖

11/08/07
去年、大学時代最後の夏休みに体験した出来事です。

女友達と二人である離島に旅行に行き、島内を適当に散策していた。

突然、どこから出てきたのか気づかなかったが目の前に男が現れ、俺達に助けを求めた。連れがケガをしている、助けてくれと俺達に訴えた。

男の片腕は変な方に曲がって肩からダラリとしており、痛がる素振りはなかったが、骨が折れているのは明白だった。

俺たちは走る男についていった。遊歩道を抜け、草むらから雑木林に入った。その瞬間、数メートル離れてついてきた友達が、危ない!と叫んだ。

ふっと足を止め振り返ると、青い顔をしている。改めて前を見ると林などなく、目の前は断崖絶壁だった。もう数歩も進んでいたら落ちていたのではないか。

先導していた男はいつの間にか消えていた。

友達が言うには、前を走る男の姿は見えていた。しかし、俺の見た林などなく、警告板を無視して崖に向かって走っていく俺たちを見て、怖くなり声をかけたという。

男がいつの間に消えたのか結局わからなかった。俺はたしかに林を見ており、その光景や虫の鳴き声なども覚えている。

しかしどういうわけか振り返った先は崖だった。男は坊主頭に派手な柄のシャツで、どことなく悪そうな雰囲気だった。