
俺は地元で就職してるんだけど、つい一週間前、東京の大学に行ってる中学時代の同級生から電話があった。
それぞれ別の高校に行って、こいつとは卒業以降連絡がなかったんでちょっと驚いた。出てみると
「中学2年の社会体験学習のときのことをできるだけ詳しく思い出してみてくれ」
と思いもかけないことを聞かれた。
「なんで今頃そんなことを聞くんだよ」
と問い返すと
「わけは後で説明をする」と言う。
中学2年のときはそいつと同じクラスで、たしか俺が班長で4人グループで郊外にある食肉工場の見学に行ったはずだ。
自分たちが興味のある分野(俺たちなら食品加工業)を選び、電車で日帰りできる範囲から訪問先を決めて自分たちで連絡を取り、出かけて行って何らかの体験をさせてもらったり、質問に答えてもらったりするという活動。
もちろん担当の先生も連絡してくれるし、校長からの依頼状も出る。
俺たちはそのとき菓子工場をねらってたんだが女子のグループにとられてしまい、それでソーセージなどを作ってる工場にしたんだっけ。
俺が班長だったからアポの電話をかけたんだけど、市内の有名工場には日時の都合が合わず断られてしまって、酪農家の有志が立ち上げたという郊外にある小規模な工場を訪問したのを、そいつ(以下友人)との話の中で思い出した。
当日バスと歩きで9時頃に着いた工場は、想像してたよりも大きな建物で、若い女の人と年配の男の人が迎えてくれた。
俺たちはまず生産過程を見学させてもらう予定で、受付で衛生服と帽子をつけさせられ、消毒をうけて工場内に入ったんだが、最初に入ったホールのようなところに大きな神棚があるのに驚いた。
質問をすると「これは畜魂(ちくこん)をおまつりしてあるのです」という答え。どうやら原材料となる豚や牛などの御霊を鎮(しず)めるためにあるらしかった。
その後、原料肉から形をつくり、くん煙し、加熱し包装するという過程をひととおり見せてもらった。
衛生にかかわることだけに体験することができる部分はなかったが、俺たちは場内にこもる熱気と機械の音、それから無言で黙々と作業をする少人数の従業員の様子に圧倒されっぱなしだった。
その後、小会議室であらかじめ考えてきた質問に答えてもらうことになったんだが、友人がトイレに行きたいと申し出た。
「すぐそこだから」と簡単に場所を教えられて一人で行ったもののなかなか帰ってこない。女の人が様子を見に行ったが、しばらくして戻ってきて、
「お友だちは気分が悪くなったようなので、保健室で休んでもらっています。原料のにおいや熱にあてられたのかもしれませんね」
ということだった。
俺たちは友人ぬきであれこれ質問をしたが、どれもていねいに答えてもらった。製品はほとんど外国に出しているというのが意外だった。
その後、まだ人のいない社員食堂でハムやソーセージを試食させてもらうことになり、とてもおいしかったのを覚えている。
おみやげをもらって帰る段階になって、別の女の人につれられて友人が戻ってきたが、顔色がすぐれない。
俺たちは学校に帰って今日の体験を新聞にまとめる活動をしたが、友人はやはり具合が悪いようで、そのまま早退し翌日から学校を2日休んだ。
ここからは友人の話をまとめたもの。
…俺、あのとき具合が悪くなっただろ。トイレに行く前まではなんともなかったんだけど、行く途中の廊下に開いているドアがあり、全面に黒いカーテンがかかってる大きな窓があったんで、何気なく入ってすき間からのぞいてみたんだよ。
そしたら、そこからずっと下の方に広い部屋が見えて、大きな機械についた変電所にあるような電極がいくつもうなってた。
そのまわりを先がとがった白い頭巾をかぶった人が数人歩き回ってて、床に大きな五角形の星が書いてあったと思う。
窓を触ってる手にビリビリという振動を感じて、そしたら急に頭が猛烈に痛くなってその場にしゃがみこんでしまったんだ。
すると背後に俺たちの相手をしてくれていた女の人がいつの間にかきていて、保健室につれてってくれた。そこには白衣を着た年配の女の人がいて、俺はゼリーのようなものを飲まされてベッドに寝かされた。
そこで夢を見たような気がするんだ。はっきりとは覚えていないけど、ベッドの周りを、白い頭巾と白衣の人たちに囲まれている夢だ。
頭巾の穴からのぞいているのは人間じゃなくて動物の眼だと思った。
そこで目がさめると、頭痛はなくなってて、そのかわり胃がちょっとムカムカした。さっきの女医さんのような人が
「だいじょうぶですか」
と聞いたんで、無理をして
「迷惑かけてすみませんでした」
と答えてお前らのとこに戻ったんだよ。でもその後も調子悪くて学校を休んだりしたけどな。
で、なんでお前のとこに連絡したかっていうと、この間、大学の部活の合宿の後に血尿が出た。顧問の先生が心配してくれて検査のために入院したんだが、そのときに腎臓が片方ないことがわかったんだ。
医者の話では生まれつき片方しかないのだと思うが、それにしては臓器の発育の仕方などにおかしな点がある。しかし体に摘出手術の跡などがまったくないんで、そう考えるしかないだろうとのことだった。
これを聞いたときに、なぜかあの体験学習のことが頭にうかんできて気になったんでお前に連絡してみた。まあ気のせいだろうとは思うが。
ただネットであのときの工場を検索してみたんだけど、まったくひっかからないんだよな。田舎なんで宣伝してないのかもしれんけど。
…こんな話だった。
先日の日曜日にバイクで、見学した工場の場所を思い出しながら行ってみた。
するとどうやら解体されてしまったらしく、大きな建物だった跡は草地になって、その端のほうに黒いみがかれた石の碑がつくられていた。
碑には「畜魂」と大きく彫られていて、その後に小さく五角形の星マークがついていた。
近所の人に聞くと、もう数年前に廃業してしまっているとのことだった。従業員は地元採用ではなかったんで、詳しいことを知ってる人間はいないと言われた。
コメント
コメント一覧
元々実話って体で投稿されてたわけでしょ?これ
最初から創作として提出されてるんならその書き方で良いんだろうけど、実話って設定なら書き方を工夫してもらいたい
厚顔無恥
珍しく見学者がきたその日にわざわざそんな怪しい衣装着てカーテン一つ隔てたところで作業してないと思うのだがな。トイレ行く途中にでも見てくれといわんばかりにw。更になんで臓器なんか捕るんだよ。せっかく本人が夢で見たことにしてくれてるのに、余計なことすんなよ
見本見せて
気分が悪くなってそんな夢を見たんだろう。
腎臓についてはしらん。
自分も子供の頃から「心臓右傾(普通より右側にある)」だと言われてたんだけど、この前入院前診断の時に普通の人と同じ位置になってて、心電図とMRIとアイソトープとレントゲンにすごい時間取られた。
その前に心電図とったのはその4年くらい前に市の無料年齢健診だったから、その病院とかに連絡したり心電図送ってもらったり。
まぁもちろん理由も原因もまだわかってない。大学病院に行くか、って話で止まってるけど、生活に支障がないから医者もこのままでよくない?って。
右心左心が逆というひとでも普通に生きてるんだから、って。
人の体なんてそんなもんなんだよ。
KKKを知らない?!
クー・クラックス・クランという白人以外が大嫌いな秘密結社。
20世紀にはまだ活動していたが21世紀は知らん。
お前もう加工肉食うな
鉄十字団やしねしね団か、、
BF団(OVA版)か、ミラージュ騎士団(設定変更前)か・・・
考えられるのは3パターン。どれかな?
a)友人は腎臓摘出の痕跡すら残さない技術を持つ何者か(宇宙人?秘密結社?)に手術された
b)友人は精神的な病(統合失調や認知症を含む)にかかり、手術で腎臓摘出した記憶を無くした
d)友人の記憶にないほど幼い頃(~低学年)、本人が知らないまま親が腎臓を売っていた
>大きな機械についた変電所にあるような電極がいくつもうなってた。
>そのまわりを先がとがった白い頭巾
単純に屠殺部屋だったんじゃないだろうか。
外から見えて気持ちいいものじゃないから、子供のためにカーテンを掛けたと思われる。
牛を回転させる機械は大掛かりだし、血を洗うためのホースがそこら中から生えてる。
屠殺してる人は汚れが分かりやすいように、白いエナメル製の服を着てることがほとんど。
そこに夢現の妄想がミックスされたとか。
生まれつき片方の腎臓が無かった可能性も。
普段は臓器を取り出した後の肉も有効利用しているという事だと…
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