12/12/11
友人の話。
山中のケモノ道を一人たどっていると、見えない何かに顔をぶつけ、こけてしまった。幸いにも硬い物ではなかったようで、ケガは負っていない。
身を起こして確認してみたが、目の前の空間にはやはり何も認められなかった。
「一体何にぶつかったんだ?」と不審に思いながら、手を前方に伸ばしてみた。すると、そこには何もないはずなのに、暖かくて柔らかい感触が返ってきた。
驚きながらなで回したところ、目には見えないが、透明な人型の何かがそこにある。背丈は彼と同じくらい。まるで空気が人の形に固まっているみたいで、何も動かず、何の反応も示さない。
なおもそれを触っていると、いきなり背後から何かが「ドンッ」とぶつかってきた。思わずよろめいて前方に踏み出すと、すっぽりと件の人型空間にはまり込んでしまう。
そのとたん、全身が硬直した。金縛りに遭ったかのように、身動き一つ出来なくなる。
悲鳴を上げることもかなわずに突っ立っていると、後ろから何かが触れてきた。何者かが彼の身体を、恐る恐るなで回していた。
やがて金縛りは解け、身体が自由に動かせるようになった。あわてて背後に目をやったが、やはり誰の姿も見えない。
足早にそこから逃げだし、ふもとに着くまで足を休めなかったという。
コメント
コメント一覧
ラバウルの森で水木しげるが死地に向かうことを阻んだ「ぬりかべ」も姿は見えんかったらしい。
後ろから押したのは誰か分からんが、人間を見えない壁に塗りこめる「女の妖(これもぬりかべと呼ばれていたような?)」の話を読んだことがあるから、二体で一つなのか、組んで行動しているのか。
想像するの楽しい。
コメントする