09/06/14
アパートに帰っていつものようにPCをつけてなんとなく過ごしているとふと、異臭が漂ってきた。物が腐ったような、それでいてどこか懐かしいような臭い。
辺りを見回して見るが、臭いの原因になりそうなものはなかった。その日はそれで忘れた。
次の日、アパートの玄関を開けるとまたあの臭いがした。どこから臭うのだろうとゴミ箱の中や流しの下を見るが、異常はない。しばらくすると臭いはふっと途切れた。
そしてまた次の日も同じように、ふとした時に臭いが漂ってきた。徐々にその臭いは強くなっているようだった。隣室に何かあるのだと思い、大家さんに相談してみることにした。
夜にも関わらず大家さんはこころよく原因調査を引き受けてくれた。
マスターキーを持った大家さんと、今は空き家になっている隣室に入った。埃の匂いがする。しかし、特になんの異変も異臭もしない。
次に上の階に行くことにした。
自分の上の部屋の住人とは交流もなく、どんな人がいるのかも知らなかった。
チャイムを押しても反応はない。念のためということで、大家さんは鍵を開けて中に入っていった。自分はドアの外で待つことにした。
大家さんが入ってしばらくもたたないうちに、悲鳴が聞こえた。何事かと中を覗くと、何かを抱き抱えた大家さんがこちらを見て救急車と叫んできた。
あまりの必死な形相に携帯を取り出すと119を押した。相手の声を聞きながら、部屋の中から漂ってくるあの臭いを嗅いでいた。
部屋の住人は風邪をこじらせて死にかけていた。必死に手の届くところにあったつまみや、インスタントの麺をかじり生き繋いでいたのだった。
もしも、あのまま放置されていたらそのまま死んでいたそうだ。
身体にはひどい床ずれができていた。あの臭いは生きたまま人の腐る臭いだった。
包帯を巻いたままの傷口のような臭い…それはどこか懐かしく、いつまでも味わいたいような臭いだった。
コメント
コメント一覧
床ずれができるようなら、食い物食うこともできないし食えるなら床ずれにはならん。
都合のいい話を作るな。
電車やバスの中などの閉じた空間では匂いが感じられることが結構ある。
あまりに強烈な匂いなので周りの人が結構離れたりするが
自分は逃げ出さないようにしている。
彼らも最後の力を振り絞って生きているから最後の生の姿に対して尊敬の念しかない。
たまにでいいから思いだして悶えてください
免疫機能の落ちた高齢者や基礎疾患持ち、不摂生になりがちで部屋掃除に横着な単身者とかならあり得ない話でもないけどな
風邪ウイルスの増殖力に免疫機能が対応しきれないから症状が長引いて死なず治らずの範囲で苦しんでどんどん衰弱していく
この話のケースだと合併症で疱疹とか皮膚炎とか発症しているのかもね
交換し忘れた日の絆創膏の匂い。
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