マンション、夜
06/09/20
以前、カミサンを連れてパチ屋へ。裏口のない店、1階左奥の島。

その通路には、約10台。つまり背中合わせに20台ぐらいある感じ。正面から見て通路右側の、手前から3台目と4台目に並んで座る。

もともと稼動の良くない店で、その列にはわれわれ以外いない。

打ち始めると、ふと左から気配。その方向(通路奥の隅)を見るが、誰もいない。しかし気配だけは消えず、どんどん強くなってくる。

ちょっと霊感がある俺には、「いるな……」と分かっている。

やがて、気配は人の形になる。冬物ロングコートを着た男性。腰から下だけが見えている。俺はカミサンに言う。

「あそこにいるけど、見える……?」

霊感がないはずのカミサン、ギョッとした顔になって……

「形は分かんないけど、なんか雰囲気がヘン!壁がゆがんで見える!」

こっちへ近づいてくることもなく攻撃的な感じもしないので、「帰ったほうがいい?」と言うカミサンを制止して、打ち続ける。

“霊”の姿は、相変わらず腰から下だけ。上半身は霞にかかったように見えない。

俺は頭の中で、話しかけてみた。

「あなたもパチンコ好きだったの?俺たちの台、当ててみてくれないかな?」

すると数分後、俺に大当たり。続いて、カミサンも。

「ありがとう」と言うつもりで左を見ると、“霊”の姿はなく気配も消えている。仕方なく心で「ありがとう」と念じ、「できたら成仏してくださいね」と俺。

約2時間後、2人で10箱ほど出してヤメ。徒歩での帰路、「たぶんスーツにコート姿の男性だった」とカミサンに説明。

「当ててみて、と頼んだら当たったんだよ」

「じゃあ、いい人だったのかな。視界はおかしかったけど雰囲気はヘンじゃなかったし」

とカミサン。

家に到着。うちは、マンションの3階。先に階段を上がったカミサンが、「あっ!」と声を上げてうずくまる。「どうした?」と俺。

するとカミサン、

「さっきのコートの人って、茶色のコートだった?」

……正解。茶色の、ツイードみたいなコートだったよ。

「見て、うちの前……」

すると、間違いなくパチ屋にいた“コートの人”が、うちの玄関の前、今度は全身が見える形で立っていた。

その後、われわれは仕方なく、いったん家には入らずコンビニに行き、塩を買って戻りました。

コートの“霊”から悪い感じはしないものの、一緒に“帰宅”するのはイヤだったので、お清め程度ぐらいはしようかと。

コンビニは近いので、行って帰って約5分。戻ると、“霊”は消えてました。とりあえず玄関前などに塩をまき、ふたりで手を合わせてから入室したわけです。

以後は、何もありません。

まったくの実話(10年以上前)なので、面白くなかったらゴメンナサイ。

ちなみに、店は東京練馬区の某店。とある映画にも登場しました。まだ営業してますが、おどろくほど閑古鳥だそうです。