12/07/10
俺は葬儀に供える花の花屋やってるんだ。年間50件超の仕事があるから長いことしてると不思議なこともある。
その日の葬儀は40代の人だっけな。仕事帰りのまったりムードで急に心筋梗塞起こして知らん間に死んだ、そんな人だった。
ここの地方は田舎で、葬儀も大体は実家でやる。新築の綺麗な家で、母親らしき婆さんが車椅子でしんどそうなのが印象的だった。
その家に花を添えに行ったんだけど、弔問客(ちょうもんきゃく)のために棺おけの顔の部分が空いてたんだ。
正直、遺体の顔見ながら仕事すると大抵ロクなことがない。俺の気が小さいだけかも知れないけど、遺体の顔を見ると心臓をギュッと握られたような軽いショックを受けるんだ。
だからその日も嫌な予感しながら、顔に花びらや水を落とさない様に慎重に仕事してた。
その日もやはり見てしまった。胃がグッと出て来そうな感覚を抑えながら、いつ見ても慣れねーなーとか考えてた。
死んでからもヒゲて伸びるんだよね。無精ヒゲ伸びた青白い顔をなぜかジッと眺めてしまった。
その時に不思議なことに気がついたんだ。遺体の目は当然閉じてるんだけど、その閉じた目の上に黒目みたいな物が浮いてて、それがギョロギョロ動いてる。
うわー気持ち悪いな、なんだあれ?とか思って見てたら、その黒目がギロっと俺をにらみつけた。
身がすくむてのはまさにあの状況なんだろうな…。手に花かごを持ちながらお互い見つめあっていた。
結構長い時間だったと思ったけど、そうでもなかったのかも知れない。
鼻先にご遺体の近くにあった線香の匂いがふっと漂ってくると、いつの間にかその黒目は消えていた。
でもね。正直この仕事やってりゃ怪奇現象なんて気にしてたら仕事にならんのよw
だからやる事やって一便終わらせて、家帰ってアジシオを右肩(俺は何かあると右肩が猛烈に痛む)にぶちまけて、二便の配達の用意をした。
おかしなことが起こり出したのはその後だった。
供花(きょうか)を作ってたんだが、俺が近づくと花がしおれるんだw最初は偶然かと思ったんだが、五本もやられたところでいい加減腹立って、もう一回塩ぶっかけたら現象は止まった。
二便の配達に出かけてその御宅についたら、ばったり焼き場に行くために出棺する所に出くわした。
おかげで設置も出来ずに、ご遺体が運ばれ若奥さんと親族が泣く泣く出発されるまで待たせて頂いた。
三便は焼き場から帰ってきたご一行様に出くわしたwおかげで(以下略
さすがにご遺体が骨になったら自身が亡くなったことをようやく受け入れたのか、右肩の痛みと足止めされるような偶然はピタリと止んだ。
コメント
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年間葬儀50件は一軒の花屋にしては少なすぎ。ならば余計、専門では無理。ぼったくりなら別。
花は「添える」ことはない。供える、生ける。
葬儀に関わる人は「供花(くげ)」と言う。「きょうか(きょうげ)」は花屋なら特に使わない。
斎檀は花が入ってからご遺体を安置する。ご遺体がすでに棺に入ってるのに花を生けることはしない。
出棺だの還骨だのに至るまで、まだ花屋が花を持ってくることもない(片付けは出棺から還骨の間にする)。
ここまで葬儀に関わることを馬鹿にした奴もいない。人の死を尊ぶことができないとこう言う堕ち方をするのか。
まぶたの上を黒い甲虫が這い回っていた可能性。
年間50件で暮らしていけるなら俺も葬儀の花屋やりたい
死後にヒゲが伸びるというのは、実際は皮膚が収縮することで
皮膚下にあった分が顔を出すだけだと聞いたことがある
葬儀専門なんて書いてあったか?
>俺は葬儀に供える花の花屋やってるんだ。
こんな書き出しで、葬儀専門じゃないなんてあり得るか?
検索したら普通に葬儀専門の花屋出てくるが…
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