曇り
12/05/29
今年の雹(ひょう)の話。

ちょっとなら大丈夫だと思って外出した先で遭遇した。

ガチで握りこぶし大のが目の前に落ちてきて砕けた。当たってたらどうなってたんだと思ったら、その場でへたりこんじまった。

すぐ横の店のオーナーさんが顔なじみで、引きずってもらって店の中に退避させてくれた。パンツぐっしょり濡れてたわ。

で、ふと気づいたんだよ。

その店とっくに廃業してるし、二階に住んでたオーナー夫婦は旦那さんは亡くなって、奥さんは子どもを連れて引っ越してった。

「おっさん…あれ?亡くなったんじゃ…」

明るかった店が突然暗くなって、笑顔のおじさんも消えた。今ならお礼の一つも言えるがあんまりにも怖くって、ウヒョウーとかいいながら店飛び出しちまったよ。

ほんでまあ後日警察のご厄介になった。ばっちり不法侵入だからなあ。

俺はなんとか事情を説明したんだけど、俺が逃げ出した後誰かが店舗あさったらしくて、指紋はとられるわなんやとな。結局俺の指紋は床くらいしかついてなかったけど。

んで勾留(こうりゅう)されてる最中に奥さんがきた。店はたたんだけど建物はまだ奥さんのものだった。俺の顔見て一言

「あ、パンツよく買いに来てた?」

俺生まれつき尿漏れしやすい体質で、下校途中とか漏れて替え忘れた時にはこの店で買ってたんだわ。

で不法侵入の件は奥さんご自身が話きいてから被害をどうするか考えるとさ。奥さんの前でこの話するのもなあと思いつつ

「実はやばい雹で腰抜かしてチビってたら、おじさんが出てきて店の中にかくまってもらったんです」

「ああ、そういうこともあるかもねえ。あの人自分に子供がいないからってすっごくあなたの事かわいがってたから」

警察ポカーン。俺ポカーン。警察官さんが、信じちゃだめですよこんな嘘、と奥さんを説得するんだが

「私もよく主人の幽霊見ますよ?お風呂場とかで」

なんてちゃかすあり様。結局俺が悪事をなそうとしたとか、そういう証拠とかなしで、勾留延長はされずに釈放された。

ちなみにもうみんな気づいたと思うけど、奥さんから話を聞いて家に帰って風呂に入ってるときに気づいた。奥さんは子ども連れて出てった。

でもおじさんには子どもがいなかった。俺をかわいがってた。

じゃあその子はって思ったら妙に心配になって、警察に謝りたいから連絡先を教えてくれっつったら、だめだっていうから、じゃあ謝りたいって伝えてくれといったらそのくらいなら良いと。

ほんでつい先日の土曜日にあって、その時お子さんもついてきてた。

お子さんすっごく元気で、あちこちしばらく遊んでやってから、公園のベンチに座って話をした。おじさんに子どもがいないって話も失礼ながら聞いた。

そしたらあっさり連れ子ですと。なついてくれなくておじさん凄く寂しがってたんだそうな。

次はあの子がなつける主人を探そうと思ってましたっていって手を握られたんで、ああ、激励してほしいんだなと思ってな。

しっかり握手して見つかることを祈ってますっつって別れた。

そしたらなんか近日中にまた店再開するから絶対きてくださいねと言われた。早く新しい旦那と仲睦まじい姿がみたいもんだ。