12/08/27
きこりに聞いた話。
仕事を終えて軽トラで山道を下っていると、前方に小さな人影が見えた。道の真ん中にぼんやりとたたずんでいる。まだ小さな子供らしい。
近づいてみると知人の息子で、確か小学校に上がる前の年頃だった。周囲に人の気配はない。知人の家はここから数キロ離れたところにあるのだが…
こんなところで何をしているのか?誰かと一緒なのか?そんな問いかけにも、子供は口をつぐんだままで視線を宙にさまよわせるばかり。
らちが明かないので助手席に乗せ、車を知人の家へと走らせた。
戸口で呼びかけると奥さんが出てきたが、事情を話すとけげんな顔になった。
「うちの子ならずっと家にいるんですが…」
その声に反応したように、奥の部屋から当の息子がひょいと顔を出した。
キツネにつままれたような思いで車に戻ると、車内には誰もおらず助手席には大振りの木の枝が立てかけられていた。
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