04/07/09
名〇屋市立K中学に通っていた時の話。
その中学に通っていた人ならだれでも知っている有名な話なのだが。
三年の私達のクラスにはピアノが置かれていた。もちろん音楽室以外にピアノが置かれているのはこの教室だけ。
しかもスタンウェイ。アップライトの古いピアノだが、鍵盤といい装飾といい、いかにもお高そうな風格を備えていた。長い間調律をされていないようで、弾いてみるとかなり音が狂っている。
でも私の家にある安物のピアノより音が素敵だったので、いつか調律してやろうと思いながら放課後は毎日勝手に弾かせてもらっていた。
スタンウェイを教室に置いておくなんて、ここの中学って金持ち~などとそのときは別段不思議にも思っていなかった。
文化祭の準備をしていて、遅くまで学校に残っていた時だった。カバンをとりに教室にむかって廊下を歩いていると「ポーン」とピアノの音が聞こえてきた。
あれ?教室にだれかいたっけ?そう一瞬思ったが、今聞こえたピアノの音があまりにも現実感のないまぼろしのような響きなので、思わず教室の入口の引き戸の前で立ち止まり、中の気配をうかがった。
廊下側の窓は全て閉まっていて、教室には電気もついていない。だれかが中にいるような物音も気配もまったくせず、しーんとしたまま。
息を詰めて入口の前で固まっていると、また静寂を破ってピアノの音が……。
「ぽーん…ぽーん…ぽーん…」
間違いなく教室の中でだれかがピアノを弾いている。弾いているというか、一本の指でひとつひとつ鍵盤を押している。
でもひとつひとつの音をつなげると、なんの曲だろう…あきらかに曲を弾いているのだ。ふいに音が途切れた。
勇気を出して戸を少し開け、顔だけ入れて薄暗い教室を見回した。だれもいない…予想はしてたけど…なんなんだよぅ…
怖さ倍増で後ずさりをした瞬間
「バアァァァ…ンッ!!」
両手を思い切り鍵盤に叩きつけたようなものすごい音が響き渡った。
廊下を走り階段を飛び降り、職員室に飛び込むまで息をしてなかったと思う。それこそ真っ青な顔だったのだろう。職員室にいた先生達がびっくりして私の顔を見ていた。
担任の先生のところまで行ったが、なんと言っていいかわからず、モジモジしてしまった。笑われて相手にしてくれないだろうと思ったからだ。
先生は「どうしたんだ?」と私の様子を怪しみながら、私の言葉を待っている。しょうがなく
「あの…カバンを取りにいったらピアノが…あの…」
すると、笑うだろうと思ってた先生が近くにいた音楽のS先生と
「ああ、あの子だ」
そういってうなずき合い、こんな話をしてくれた。
10年程前、S先生が担任をしていた三年生の女の子が病気で亡くなった。彼女は幼い頃からピアノが好きで、体調が悪く学校に行けないときはいつもピアノを弾いてさみしさをまぎらわしていたそうだ。
彼女の両親は、我が子がもうそんなに長く生きられないのを知って、彼女が欲しがっていたスタンウェイのピアノを買い与えた。
しかし、それから間もなく彼女の病状は急激に悪化し、とうとう亡くなってしまったのだ。
両親は弾き手のいなくなったピアノを見るのがつらくて学校に寄付を申し出た。学校に行きたがっていた娘もきっと喜ぶだろうからと。学校側もその申し出をこころよく受け入れ、そのピアノを音楽室に設置した。
ところが、設置したその日から怪奇現象が頻発した。
音楽の授業中、気分の悪くなる生徒が続出したり、開けていたフタが突然「ばたーん」とひとりでに閉じてしまったり、急に音がでなくなったり、音楽室の窓ガラスにいつの間にかヒビが入ったり。
そのうち、何人もの生徒がピアノのそばにたたずむ女の子の姿を目撃するようになった。女の子はつぶやくのだそうだ。
「ここはさびしい…」と。
S先生は学校と相談し、彼女がいたクラスにピアノを設置しなおしてみた。すると、彼女は満足したのだろうか、それきり怪奇現象はぴたりとおさまったそうだ。
そのかわり…夜になるとピアノを弾く音が聞こえるようになった。
ピアノが勝手に鳴ること自体怪奇現象じゃん!そういう私にS先生は「それぐらい許してやれよ」と言った。
そんな話を聞いた以上、教室にカバンをとりに戻りたくはない。明日、宿題忘れで怒られることを覚悟でそのまま家に帰った。
それきり私は二度とそのピアノには触れなかったし、調律してやることもしなかった。調律失敗して恨まれるのが怖いし…。
あれからもうン十年。まだあのピアノはあの教室にあるのだろうか。彼女は今も毎晩弾いているのだろうか。
コメント
コメント一覧
その中学に通ってた人なら誰でも知ってるんでしょ。
その中学の卒業生はみんな地元から離れてるわけじゃないだろうから、聞けば?
そんな事実ないから聞けないんだよね。
敢えて聞かないところがいいんじゃないかなと・・・
心霊現象に対するスタンスはこの程度がいいんじゃないかと
と調子こいて演奏したおふざけさんが
元の持ち主さんに祟られるオチ…
コメ2は、作り話の結末を聞いて回れないよね?ってことだけど?
調律する技術がある(はずなのに)かなり音が狂っているピアノをいつか調律してやろうと思っているだけで放置しているのは「明日から頑張ります!」みたいなものなのか
スタンウェイでググったらスタインウェイしか出てこなかったが昔はスタンウェイと呼ばれていたんだろうか
音楽教師とは言え公立中学校で10年(あるいはそれ以上)転勤無しなのはありえるのか
細かい事はどうでもいい、などと言わずに、表記は正確に。こんな程度の間違いでも話のリアリティを損なう事おびただしい。
一般住宅でも重量に耐えるよう
ピアノを設える箇所を重点的に頑丈に造る。
普通教室も頑丈な工法でよかったね。
揚げ足しか取ってなくて草
へそ吉にもなんか言ってやってくれ
またしても私の偽者が揚げ足取りを致しまして申し訳ございません。
しかも、正確にと宣いながら物量に使う「おびただしい」を「甚だしい」と間違えております。
それと申しますのも、私めが今まで人様の揚げ足取りを行ってきたからでございます。
それがために偽者までがこのように揚げ足取りを始めましたこと、深くお詫び申し上げます。
ろくに知識も無いくせに、自分ほど博学な者はいないと自惚れているから墓穴を掘る。私の事を悪しざまに言う(書く)前に国語辞典を見るくらいの労を惜しむな。
いまでもそう呼んでいる人もいますし、ピアノにまつわるサイトでも見掛けます
日本の正式な代理店が出来たのが1997年と割と最近なので、日本語のおける正式な表記が定まっていなかったのではないかと思います
あと、怪談というのは手品のように不思議や怖さを楽しむ娯楽で、真偽を突き詰める学術的な態度は二義的なものではないかと思います
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