11/06/21
怖い話があるので書きます。
事の発端は夢からでした。
青みがかった黒髪の日本人形が夢に出てくるのです。
夢の中の人形はただオレと見つめあっているだけで、一体何を意味しているのかさっぱりわからない。
一週間毎日続き、ほとほと悩んでいた頃、夢に変化があった。人形がなにか語りかけてきた。
しかし、意味のあるような言葉には思えず、オレには通じなかった。しかし、何度か同じ夢を見るうちに気がついた。どうやら数字を言っている。
十桁の数字。
オレは目が覚めるとすぐにその数字をメモに書き留めた。よくよく見てみると電話番号のような気がする。頭三桁はオレの住む地域の市外局番と一致する。
しかし、当然のことながらとても電話をかける気にはなれず、なにもすることはなかった。しかし夢は相変わらず続き、人形は数字をオレに伝え続ける。
人形の夢を初めて見てから二週間、一念発起したオレは電話をかけてみることにした。
なにか夢に関するヒントが得られれば、という思いからの行動だったが、同時に何か不吉なことがあるのでは、という恐れは頭から離れなかった。
とりあえず番号を検索してみると、あっさりヒットした。
県内のある居酒屋のようだった。家からそう遠いわけでもない。オレは週末その店に行ってみることにした。
友人二人を連れ立って電車と徒歩で一時間、小さな町の居酒屋だった。看板にある電話番号はあの数字と一致する。
店に入るとまだ早い時間だからか、客はオレたちだけ。酒もそこそこに店主に夢の話をしてみた。
店主は心当たりがないようだったが、カウンター越しに聞き耳をたてていた女将が詳しい話を聞かせてくれと言ってきた。
話を一通り聞かせると、女将はおそらく家にある人形じゃないか、越してきてからずいぶんになるが、しまいこんだままだった、ちょっと探してくるね、と店の奥に消えた。
しばらくして、女将はすすけたクリアケースにしまわれた日本人形を持ってきた。一目でわかった。夢のあの人形だった。
女将によると、この人形は女将父が生前従妹から譲り受けたもので、詳しくはわからないが非常に貴重なものであるとのことだった。
もとの持ち主の従妹は金に汚く、変わり者で、親戚付き合いは何年も前に絶ってしまっているとか。
女将としばらく話し込み、もしかしたらということもあるから、とその従妹に連絡を取ってみるようすすめ、女将もそれに同意した。
夢はしばらく続いたが、ある日を境にぱったりと見なくなった。人形にまつわるあの一族のなかで、何かしらが解決したような予感がし、肩の荷が降りるようだった。
しかし、程なくして女将から連絡があった。
女将は従妹を探し、人形を返すことができたらしい。従妹は病に伏せり寝たきりだったが、息子夫婦の家に引き取られ暮らしていた。人形を見ると、とても懐かしがり喜んだ。
従妹の故郷の数少ない思い出の品だったようだ。涙を流して女将に礼を述べたという。
年のせいか、評判よりずっと丸くなったようで、感じのよい老婆だったとか。息子夫婦も好感の持てる人物で、これをきっかけに親戚付き合いが戻るかも、と女将は喜んだ。
しかし、女将が人形を返してから一週間もたたないうちに訃報が届いた。従妹が亡くなったそうだ。
女将は人形が従妹の最後によりそうために、私たちを頼ってきたのかねえ、と語った。
オレはにわかに全てを消化することはできなかったが、なんとなく物の縁や人の縁に触れることができた気がして、まんざらでもなかった。
しかし、この一件は終わってはいなかった。
人形が再び現れた。
今度は夢の中ではなかった。
夜物音で目を覚ました。家はアパートの一階なのだが、どうも窓の外の庭でカタカタなにかが音を立てている。
風のせいかと思ったが、どうも気になって寝つけなかったので、片付けようと窓を開けるためカーテンを引くと、いた。夢で見た、女将が持ってきた、あの人形だった。
青みがかった髪が揺れている。風はない。カタカタ揺れているのは人形自体が動いており、コンクリートに足をうちつける音だった。
カタカタカタカタカタカタカタカタ
ただ一点にとどまり揺れ続けている。
以前の夢では、人形の表情など気に留めなかったが、今度は一目でわかる。怒っている。穏やかだがとてつもない憎悪の表情。
どういう根拠かは説明できないが、とにかくそう直感した。
オレはカーテンを閉め、布団にもぐり込んだ。音は夜明けまで続き、オレは眠ることができなかった。
翌日女将にこの事を伝えた。やはりというか、女将の家にも人形は現れたらしい。
寝室の隅でカタカタ揺れる人形を見て、恐怖のあまり家を飛び出し、寝巻きのまま朝までファミレスで夜を明かしたという。主人は気づかなかったとか。
その日はとてもオレは家で寝る気になれず、友人の家に泊まった。
その夜、女将から電話があった。
従妹の死に不審な点が見つかり、息子夫婦が殺人の疑いで捕まった。
亡くなる直前、人付き合いが全くなかった従妹を突然たずねてきた女将とオレに話を聞きたいという連絡が警察からあったという。
オレたちこの一連の話をしたが、もちろんとても役立ちそうな情報ではなかった。
人形の下りなど、当然信じてはもらえるはずもなく、そのような人形はあの家にはなかったという。
詳細はわからないが、どうも従妹は長い間虐待を受けていたらしく、それにより激しく衰弱していたらしい。オレたちはようやく察した。
人形は従妹のもとに連れていけと訴えていたのではなく、従妹を助けて欲しかったのだ。そして気づくことのできなかったオレ達を恨んでいる。
人形はそれからも2、3日置きにオレの家に出た。女将の家も同様だった。引っ越しも考えたが、とても逃げ切れるわけがないと、そんな気がした。
おおげさな話ではなく、オレ達はノイローゼ寸前まで追いつめられ、親戚の紹介である寺を訪ねた。
住職はこころよく話を聞いてくれ、人形自体がないことは問題だが、なんとか供養できるようやってみると答えてくれた。
同時に、従妹の墓を参り、従妹と人形を弔うよう強くすすめられた。また、部屋に貼るようにと札をいただいた。正直相談料は安くはなかった。
女将がさがした墓を参り、札を部屋に備えると人形は現れなくなった。何が効を奏したのかはわからないが、それから人形の姿は見ていない。
以上です。
一体なぜ人形はオレのもとに現れたのか、女将はわかるがなぜオレだったのか、皆目見当もつかない。
そしてなぜあれほどの怒りを買わねばならなかったのか。そして本当に人形はオレたちを許してくれたのか。
いまだに物音がすると背筋が凍る。
長文失礼しました。
コメント
コメント一覧
表向きは人の良さそうな息子夫婦は、いきなり尋ねてきた従姉妹(女将)と赤の他人、母親の大事な日本人形にビビったのじゃないか。
もしかしたら母親が自分たちの目を盗んで、従姉妹に連絡したのかもしれない。母親の大事な人形は「私たちがついてる」「いつも見ている」という意味じゃないのか。
もしくは母親は、遺産を従姉妹に、または人形に遺すつもりじゃないか。
人道に外れたことをする者は、思考回路がイカれてるから、人が聞いたら鼻で笑うような妄想をして、次に従姉妹が尋ねてくる前に、と母親をコロしたのかもしれない。
人形は、自分がそばにいることで主を守れると思ったのに、思ったより早く外道どもが主を手に掛けた。もしくは、先に人形が壊されたかもしれない。
人形が報告者の夢に現れた理由はわからないが、人形も悪いのは息子夫婦、ひいてはかつて性悪だった主ということはわかってるような気がする。
ただ、気持ちの持って行き場がなかったんだよ。自分のしたことは間違ってたのか、そのせいで主は死んだのか、と。
後味わりー
その人形を副葬品として棺に入れるものだが。
ある武士の妻が、死の直前に夫と約束します。後妻は迎えない、と。だが封建時代では子孫を絶やす事は許されず、夫は再婚せざるを得ませんでした。そして前妻の怨霊は後妻を取り殺す。この話を聞いた小泉八雲と思しき人は問いかけます、「前妻の復讐は夫に向けられるべきでしょう」。語り手は答えて曰く、「男はそう思うが、それは女の考え方ではありません」。
……この投稿と同じですね。どう考えても矛盾ではないかとの疑問を拭い切れない話。
投稿者は「一体なぜ人形はオレのもとに現れたのか、(中略)皆目見当もつかない」と書いていますが、これなどまだ序の口。人形の持ち主の従妹が息子夫婦に虐待されていたのなら、人形はなぜ息子たちに祟らなかったのか? 縁もゆかりも無い投稿者の夢枕に立つくらいなら、いっそ警察関係者に的を絞った方が良かろう。夢に出るなら出るで、持ち主が虐待されているとなぜはっきり告げなかったのか? それでいて「気づくことのできなかったオレ達を恨んでいる」とは余りに理不尽な。頭が悪くて融通の利かない怨霊だとしか言えず、出るのはため息ばかり。
それはさておき、女に縁の無い私の終生の疑問ですが(LGBTQの類ではなく、単にモテないだけだよ!)、小泉八雲の怪談のような事例が実際にあれば、本当に前妻は夫ではなく後妻に恨みを抱くのでしょうかね?
殺したのも葬式出したのも息子夫婦だぞ。
人殺しが殺した相手にそんな心遣いするか?
女という生き物は男が浮気をした時、浮気をした張本人ではなく浮気相手である女に憎悪と恨みを向ける。
と言うのは古今東西どこの社会でも同じなんだわ。
社会に出たことのないニートにはわからんようだが。
コメント有難うございます。
さて、「女という生き物は」云々と書いている時点でお前の知性の低さや性差別意識がよく分かる。パソコン画面ではお前の駄コメに幾つ「いいね」が付いているか不明だが、いいねをポチしている者がいるとしたら、それもお前の同類だな。
こんな書き込みをしているくらいだから、お前は「阿部定事件」さえ知らないと見える。''妻子ある男と同棲した女が、相手の男が浮気をしないようにと札害した'' 事件だよ。日本の犯罪史に多少なりとも興味のある者なら誰でも知っている話だが。お前のためにわざわざ説明してやる義理は無いし、書き出すと長くなるので、もし知りたければググれ。
まあ、ろくに知識も経験も無いくせに、一丁前に世間を知っている一人前の人間のような振りをしてカッコ付けたがる低知性はどこにでもいるものだ。
キモいからこそ入れる。
他の参列者から怪しまれない為に演技で入れるんたよ。
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