玄関

11/08/04
親戚のおばさん

夕方茶の間でテレビを見ていると、玄関先から「ただいまー」と聞こえた。高校生の娘の声だった。

いつもなら何も言わず鍵を開け、そのまま2階の自室に行くのに、今日は機嫌がいいのかな?なんて思った。

しかし、声は玄関先から動かず、

「ただいまー」「ただいまー」

と連呼している。

障子を開け、玄関先を覗くと変なものがいた。

頭の先からつま先まで、ペンキを塗りたくったような黒い人が立っていた。つるつると黒光りしていた。

その黒い人が、玄関先でのぞき窓に片目を当てながら

「ただいまー」「ただいまー」

と繰り返している。ぞっとしたおばさんは障子を閉め、すぐに110番した。

黒い人は玄関先で

「ただいまー」「ただいまー」

と言い続けていたが、10分ほどで聞こえなくなった。おばさんは怖くてその間トイレに隠れていた。

声は間違いなく娘のものだが、なんというか、抑揚がなく、例えるなら笑い袋のようなもので録音してある声を、何度も再生しているかのような印象をうけたとか。

その後駆け付けた警官と、帰宅した娘に事情を説明するのが大変だった。

黒い人が家にやってきたのはその一度きりだった。


引用元:https://toki.5ch.net/test/read.cgi/occult/1312115578/