354: その1 投稿日:2010/03/10(水) 00:12:25 ID:B5CPYWRG0
ネットが発達する前の話。
会社の上司がいきなり、かなり遠方にある寺に「今からこれを届けてくれ」と紙袋を持ってきた。
「なんすかいきなり」と文句を言うと、業務命令だと言ってくる。
電車賃を出すからと言われ時刻表を開けて見ると、その寺に一番近い駅に着くのが夜になる。
「宿泊費も出るんでしょうね」と言うと、認めてくれた。
しかし駅は時刻表で細字で書かれている。その規模の駅近辺に宿があるかどうかが解らない。
上司がその寺に電話をして宿の有無を聞いていたが、寺に泊まって構わないと言ってもらえた。
早速出発し、何時間もかかり、宵の口に着いた。
駅員に寺への行き方を確認したら、道なりに真っ直ぐ、一時間弱かかるそうだ。
道に出ると軽自動車に寄りかかった若者がぼーっと改札口に向かって立っていた。
道はかなりきちんと舗装されていた。
周囲に民家は無かったが、街灯が充実していた。
355: その2 投稿日:2010/03/10(水) 00:13:18 ID:B5CPYWRG0
一本道、信号無し、走っている車も無し。
通行人は…進行方向の街灯の下に、誰かがうずくまっているのが見えた。
ん?と思いながら歩いていると、人ではなかった。
人形…なんだろうな、俺の人生で一度も見ない種類の人形で、
マンガの「名探偵コナン」に出てくる真っ黒表記の犯人が現実に出てきたって感じ。
今まで見たどんな素材の質感とも違う。
人形は道路側に顔を向けているのだが、真っ黒で顔や髪や服がない。まぁ人形だ。
靴紐を結んでいるポーズだった。
ふ~んと思って通り過ぎると、また先の街灯の下に人形がいた。
今度は乳児をだっこしている大人。
また先にはベンチがあり、座っている人形。などなど全部で五体。
なるほど、最近は先端アーティストが田舎に作品を置いて、村おこしに尽力しているんだなと納得。
そうこうしているうちに寺に着いた。
住職が歓迎してくれ、荷物を受け取るとすぐ晩ご飯を食べさせてくれた。
奥さんも息子さんも歓迎してくれたが、息子さんはさっき駅で見た若者だ。
「迎えに行ったんですが、すれ違っちゃったようですね~」
話しをしているなかで
「あの道の人形、なんですか?村おこしですか?」
と質問したら、みんなぱたっと口を閉じた。
しかし住職が
「触りました?」と聞いてきたので、
「作品に触れちゃいけないのは、常識ですよ」と答えたら、またすぐ談笑となった。
「まあ朝には消えますんで」
その言葉通り、翌朝息子さんに車で駅まで送ってもらったときには、人形は一体もいなくなっていた。
356: その3(最後) 投稿日:2010/03/10(水) 00:14:44 ID:B5CPYWRG0
洒落にならないのはこっから。
帰ってきてそんなことも忘れて時間が経ち、現在に至る。
思い出したのは、部下が休み時間に読んでいた「名探偵コナン」のページが目に入ったからなんだけどね。
上記の話しをしたら女子社員が一人目を輝かせて、何故か
「今度みんなで映画鑑賞会をやりませんか?」と言いだした。
なんだそりゃ、と思ったけど、上司まで
「ここんとこ、親睦会を全然やってないからな」とやることになった。
不参加の理由もないので行ったけど…
「サイレント・ヒル」とか「杉沢村」なんて、見せんじゃねーっての!
引用元:https://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1265968434/
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