
穂高(ほたか)の奥穂と北穂の間の稜線(りょうせん)をやってた時に雷の直撃を食らったことがある。
知ってる人は知ってるだろうが、森林限界【樹木が森林となって生育分布できない限界線】以上の岩場では、雷は上から落ちて来るとは限らない。
真横から水平に岩壁に突き刺さってきたり、下手すると眼下の雲海から頭上の岩頭に飛び上がってくる事がある。
でだ、その時は稜線上は快晴で雨雲一つなく、雷注意報も出ていなかったんだが四点支持で岩場をトラバース中に、急にブーンと重低音がして髪が逆立った直後、30mほど先の突き出した岩に真横から雷が直撃するのが見えた。
岩に張り付いたまま一瞬意識が飛んだんだと思う、音はほとんど聞こえなかった。
雷はその一回だけで、どこから飛んできたのかよく分からんかったが、稲光りをまともに見てしまったので、視覚が戻るまでしばらく時間がかかった。
ようやく暗転した視野の中で光の残像が収束してくると、白い光が雷神像のように浮き出して見えた。日本画の琳派(りんぱ)とかの屏風絵(びょうぶえ)のアレだね。
参考画像

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/琳派
脳が過去の記臆を元にそういう幻覚を見せたのだと思うが、一般によく広まっているカミナリ様のイメージには、人間の脳の機能上の仕組に何か理由があるんじゃないかとか、ちょっとそんな事を考えてしまった。
そのあと何となく毒気を抜かれたような気分になって、大キレットを縦走せず北穂から涸沢(からさわ)に降りてしまったんだが、それで特に何かあったというわけではない。
しばらくまぶたの裏に雷神の残像が焼き付いて消えなかったのでよく覚えている。
おそらく俺が今までで一番怖かった出来事がこれ。
おまけ動画【落雷の瞬間】
コメント
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厨房の頃、夕刊を配ってる時に、目の前の小山の頂上の木々に落雷して同じ様になった。
5分間位目の前が真っ白になって、このまま目が見えなくなったらどうしようかとビビってたなぁ。
眼下に広がる雲海きれいだねー、なんて言ってられなくなっちゃったな
よく考えれば放電に上下なんて関係なくて、電位差と抵抗の問題だもんな
雲の種類に気を付けるよ
トールハンマーをくらったら、天罰っぽくて嫌だもんね
被害が無くて何よりでしたが、雲海から飛び上がってくる…安全を確保した状態で是非見てみたい。
それこそ龍のように見えるのでしょうね。
私達が普段目にしている雷は雲の下部分だけ、雷全体のホンの数%の過ぎないそうです。
実際の映像も見ましたが、※6さんのおっしゃるように龍のよう。
ただ何本もの首を持った龍、まるでキングギドラのようでした。
文章が理知的で頭がいい人なんだなと感じた。
おまけの落雷動画もありがたい。季節がらおっかないわあ。
秋から冬へ、その年の初冠雪が観られた10月4日でしたか、いい加減うんざり
する昇りの後半部で地に何かが落ちた轟音に震え、山荘を正面に見留た時に
青紫の天空を水平に横切る稲妻!斜め後方から歪み、宙へ突き刺すように延びる
稲妻、この時はただ幻想の絵画を覧るようで自然の神秘に酔い痴れました。
伺うと、槍の鉾先頂上で若者が落雷に撃たれ亡くなったとか…槍ヶ岳山荘は線香
の香の香りで充ちていました。
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