
03/02/28
とある高層ビルでバイトをしていた時の話しです。
高層ビルには直通エレベーターがありますよね。ここのビルは8で割れる階数ごとに直通エレベーターがありました。
例えば1~16階行きなら1階から8階までが直通で8階から16階まで各階に止まるという仕組みになっています。
7階まではテナントが入っていて、夜8時になると営業終了になるので、セキュリティーのため1階からのエレベーターは全て8階までの各階止まりになり、8階で一度下りて守衛さんに社員証を見せて次のエレベーターに乗せてもらいます。
直通は8~24階になるので15階までの方はとても面倒です。私の行っている会社は12階でした。こんな面倒なシステムになってしまったのは理由があったんです。
その日、もう一人のバイトの男の子と一緒に印刷物を取りに行ったのですが、3時間待たされてビルにたどりついた時には8時を3分ほど過ぎていました。
二人でダッシュしたら何とか最終直通エレベーターに間に合ったのです。ゼイゼイいいながらドア付近に荷物を下ろし、男の子が12階のボタンを押しました。
押しながら「何階ですか?」と聞いたんです。私たちだけかと思ったら定年間近ぐらいの、小柄で細身の黒ブチ目がねをかけた、真面目そうでとても優しい顔をした男性が奥に立っていました。
「すいません、9階を押していただけますか?」
軽く頭を下げてとても礼儀正しい方でした。男性は
「遅くまで大変ですね。体を壊さないようにほどほどにしなさいね。」
男の子に微笑みかけながら言ったんです。仏様みたいな人、いるだけで癒されるようなそんな感じの男性でした。
エレベーターが止まりました。私たちはドア付近に立っていたのでお互い左右に分かれる感じで道を空けました。その時、
「おまえら、何やってんだ?ドア閉まるぞ?」
エレベーターホールは喫煙所にもなっていて、印刷物を頼んだ課長がタバコを吸いながら覗いたんです。
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そこには見なれた風景と共に壁には12階のロゴが。急いでエレベーターから下り、振り返ってみると男性の姿はありません。私は確かに男の子が男性に言われて9階のボタンを押したのを見ました。
二人とも、かなり息を切らせていました。エレベーターのドアに手をついてゼイゼイいっていたので、止まる階近くになるとボタンのランプが消えるから、私はずっと9階のボタンを見ていたんです。男の子も見ていたそうです。
課長にその話しをすると「佐伯さんだよ。」不思議がることもなく言いました。
課長がまだ若手社員だったバブルの頃、9階にあった証券会社に佐伯さんという定年間近の男性がいて、他の会社の方にも気配りするような、本当に仏様みたいな人だったそうです。
その日、遅くに営業先から帰ったようで、9階のエレベーターホールのところで亡くなっていたのを朝出社した社員が見つけたそうです。過労死だったそうです。
お葬式にはビル内の他の会社の方たちも行ったほどだったそうです。守衛さんたちも社員が残っているかちゃんと確認できればと悔やんだそうです。
それがきっかけでビル内に社員が残っているかどうか確認するために夜8時になるとエレベーターが変わるシステムになったそうです。
課長の話では、佐伯さんは働き過ぎで倒れそうな人がエレベーターに乗ると出るそうです。
「佐伯さんが来たんだからな。お前らも働きすぎだから今日はもう帰って休め。明日も休んでいいぞ。」
課長はそう言いました。
偶然かもしれませんが、一緒にいたバイトの男の子は佐伯さんと会った日、少し熱があったそうで、休んだ日に高熱が出たそうです。
課長が休めと言わなければ、無理してその日も来ただろうと言っていました。
今でもハッキリと顔を覚えています。幽霊と言われたって信じられないほどハッキリとした姿で人がそこに立っている感じでしたから。
でも真冬だったのに半袖ワイシャツだったんですよね。
長文なのに怖い話しじゃなくてごめんね。
コメント
コメント一覧
俺はなんとなく幽霊って亡くなった人の魂とか思念とかじゃなくて、亡くなった人を想う人達の記憶の投影なんじゃないかと思ってる
だから佐伯さんを立派な人、優しい人、頑張る人だと知ってる沢山の人達が、佐伯さんの面影を現世に残してるんじゃないかなと
そうであるなら佐伯さんは自らの生前の徳が、亡くなってからもその存在を守り続けてるって事になる
それは全く素晴らしい事だな
都内だったらサンシャイン?
大阪とかかな。
人助けが好きな人は死後も人助けの仕事をしている
亡くなった後も会社に留まらず、
家でゆっくり成仏してほしいな…
完全なブラックですね
この人は、真っ白なホワイトですよ
こういう話を読みたくて怖い話から離れられない
バブル渦中の頃ならもう既に、その程度の高層ビルはそこら中に建ってたよ
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