
06/03/27
うちのおかんの話。
当時おかんは6人兄弟(男3女3)の長男の嫁として、嫁いできた。長男の弟妹はまだみんな学生で、いわば小姑的存在。
かなりの貧乏で、姑とお舅との折り合いも悪く、とくにお舅はパチンコ代がないから、子供の学費をよこせっていうむちゃくちゃな人で、旦那(つまりおれの親)も味方してくれない。むしろ一緒になっていびられた。
畑仕事で毎日こき使われ、姑と旦那が悪口を言いふらしてくれているので、近所や旦那の親戚周りの評価といえば、奴隷かなにか。嘲笑のまとだ。
味方もなく金もない。毎日が針のむしろだったおかんは、ある日赤子(おれは三人兄弟の三番目)のおれを抱いて、自殺を決意したそうな。
家を抜け出して、春の夜中に、とぼとぼとぼとぼ。歩き続けて、いつのまにか地域では有名な、古い桜の木の下へ。
これが見事な桜で、盆栽の松のような見事な枝ぶり。住人の思い出や記念の場所としてとても愛された木だったんだよ。おかんも事あるごとにその桜のある場所に行ってたらしい。
その桜がまた満開でね。月明かりに桜がはらはら散る。街灯のない時代に、その桜の白い花びらがぼんやり見えるのがまた綺麗で、
「もうこれで見納めやなぁ。あんたにどれだけなぐさめられたか……今までありがとう」
って泣きながら桜に話しかけたら、ふと背後から
「こんばんわ」
振り向いたら、笑顔いっぱいの四角い顔したおじいさんがいたそうな。
真夜中。おかんの手には赤ん坊。懐中電灯も持っていないおっさんが、暗がりで笑顔。普通だったら恐怖だよ、女だし。これから自殺するってのに変だけど。
けど不思議と、恐怖っていう感情がわかなかったそうな。で、その見知らぬおっさんに、
「子供が風邪引くわ、はよ帰り」
って言われて、腕の中見て帰らなきゃと思ったらしい。心中しようとした人間が、これから殺す子の風邪ぐらいって思うだろ?
おっさんの肩を横切ったところで、おかんも↑に気付いたらしい。
それで振り返ったら、笑顔のおっさんがいないの。桜の木があるだけ。ちなみにおっさんは死んだ曽祖父(写真が飾ってある)でもなけりゃ、地域住人でもない。
今はその桜の木も、住人の反対の声もむなしく、工事の関係で切られたけど。桜の精っていうのかな?あるんだな、こういうの。おかげでおれ生きてるし。
以上、おかんの昔話でした。
長々すんません。

コメント
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これ実話
こんばんは。って
子供が風邪ひくから早う帰り。って
勉強になりますわ
こんな普通のことが人を思いとどませるんやねぇ
桜の神さんやね
オカンも、俺も幸せなの?
なら、いいけど
その桜がなくなってしまったのは残念。
って言われて我に返る前に、愚痴を聞いてもらったり優しく諭されたりしたのかもって思うくらい良い話
で、ふとした疑問。もし外国で桜の精が出たとしたらその精の外見は日本人なのかな?
それが話題になるシチュエイションとか、聞いた時の動揺とか、
オカルト以前に前提として匂わせる程度でも言及しておけばリアリティがでると思う。
あと桜の枝ぶりを盆栽の松はないな。
まぁ、おかんがそう言ってたならしょうがないけど。(鼻ホジ)
なきゃないでリアリティガー
こんな便所の落書きに何を求めてんだ?
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