トウモロコシが食卓に上る季節になると、我が家では必ず語られる話。
今では70歳近い母親が、小4のときに体験した話だ。
ひとりっ子の母は当時、母の祖母と両親と一緒に田舎で暮らしていた。
そこは小さな村落で、近隣どうしは家庭の内情などにもよく通じていた。
母の両親は村に珍しく共働きで、GHQの通訳と教師をしていた。
母の祖母は80歳を超える年齢ながら畑を作り、家の留守をみていた。
お隣さんは裕福な農家で、子供が何人もいた。
その中に、生まれつき脚の悪い男性がいた。
脚のせいで農作業ができないといえ、思考はむしろ明晰で、
親兄弟に気兼ねしながら、人目を忍んで離れで暮らす姿を、母の家族は隣家としてよく知っていた。