12/11/30
今から5年程前のことだったと思う。
年の暮れのとても冷え込んでいた日だったことを覚えている。
俺は交差点で信号待ちをしていた。駅前ということもあり普段から交通量は多いのだが、それに加えて12月ということで交通量はかなり多かった。
俺は寒さに震えながら一刻も早く家に帰りたいと赤信号を睨みつけていた。
すると横から一人の男がするりと前に出た。ひょろりと痩せたその男は、右手をジャンパーのポケットに突っ込み左手で携帯をいじっていた。
余程携帯に注視していたようで車道の向こうの赤信号など目にも入らないようだ。男はそのまま信号に気付かず敢然と歩き車道に出てしまった。