307:17/06/08
俺は、小さな海辺の町で生まれた。
砂浜には松の木が立っていて、満潮時には松の根元まで水が来て海の中から木が生えているような不思議な光景になった。
引き潮の時は、貝殻拾いをした。赤ん坊の妹にオハジキをしてみせたら喜ぶかなと思ったんだ。
目を上げると、キラキラ光る海面に漁をする木舟がたくさん出ていた。
舟が引き上げて来るのを待ちかまえ、網からこぼれ落ちたピチピチの魚を家族の人数分拾って、俺はダッシュで家に帰った。
寺の鐘が鳴り終わるまでに帰ればセフという決まりだったのだ。