一昨年婆ちゃんが死んだ。高齢だったし、震災の心労もあったのかあっけなく逝ってしまった。
それでも残された爺ちゃんは元気だった。90歳を超えても爺ちゃんは聡明で思慮深い、尊敬できる人だった。
俺が小さい頃には英語や漢字の読み書き、相撲のルール、俳句、戦争の話なんかを教えてくれた。
爺ちゃんの住所とかが書ける年頃になってからは、季節の節目や正月、祝い事のたびに手紙をやり取りしていた。
婆ちゃんの葬式が終わってから、寂しいだろうからと手紙を書くように父から言われ、久しぶりに手紙を出すようになった。
内容は学校の話だったり、俳句雑誌の話だったり、いつ顔を見せられるかとか、姉にひ孫が生まれたよとかだった。
年に5、6通くらいのやりとりだったけど、だんだん爺ちゃんの字は読めないくらい崩れるようになっていった。