15/08/10
アサガオが咲いていたから、夏のことだったと思う。
私は5歳で、庭の砂場で1人で遊んでいた。ふと顔を上げると、生け垣の向こうに着物姿の見知らぬお婆さんがニコニコして立っている。
私はお婆さんを無視して遊び続けたが、お婆さんがいつまでも私を見ているのでとうとう気になって立ち上がり、お婆さんのほうへ近づいていった。
生け垣をはさんでお婆さんと見つめ合ったのは何分ぐらいだったのか……
突然、「〇美!」と狂ったように私の名前を叫ぶ母の声が頭上から降って来て、振り向く間もなく、私は母に抱きしめられた。