
15/06/14
時期にして太平洋戦争直後ぐらい、淡路で漁師をしていた俺の曾爺ちゃんの話。
夏のある日、曾爺ちゃんは漁師だが趣味で釣りもするので、その日の漁が終わった昼過ぎに、甥っ子と二人で小船を出していそ釣りに出かけた。
そこのいそは地元の者しか入らないような穴場で、チヌ等が簡単に釣れるはずだが、その日に限っては曾爺ちゃんも甥っ子も全然釣れなかった。
その内に甥っ子は飽きてしまい、暑いので裸になり海に入って船の周りを泳ぎだして遊びだした。
「やれやれ」と思い曾爺ちゃんも一服入れて、ふと何気なく海を見ると数十m向こうの海底に何かが立っている。
ちょっと予備知識として書いておくが、今では全く考えられない話だが、工場ができまくるまでの瀬戸内海はかなり水が澄んでいたらしく、親父が子供の頃でも明石から淡路までの連絡船に乗ると、海の底の方まで見えていたそうだ。
不審に思った曾爺ちゃんがよく目を凝らしてみると、海底に立っているのはどうやら人間のようで、ただ立っているだけでなくゆっくりと船の方へと歩いてきている。
それも一人ではなく何人も行列を作ってぞろぞろと。思わず声が出そうになったが、曾爺ちゃんの爺さんから
「海で妙なものを見たら声を立てて騒いだり目を合わせてはあかん。そういう時は見えていても見えてないふりをせえ。」
と言われていたのを思い出しこらえた。
とにかく逃げようと思った曾爺ちゃんは、甥っ子を船に上げようと「おーい、そろそろ帰るぞ」となるべく平静をよそおって、船の周りを泳いで遊んでた甥っ子の方を向いて声をかけた。
するといつの間にか甥っ子のすぐ真下に一人が立っている。かなり近くなのではっきりと格好が見えた。
そいつは防空頭巾を被ったモンペ姿の若い女で甥っ子ではなく曾爺ちゃんの方を見上げている。
「うわー!」と声を上げたくなったが、甥っ子に対して「もたもたするな!!」と怒鳴ることで気持ちをごまかした。
その女は甥っ子が泳いでる真下をついて歩いてきて船に近づいて来る。甥っ子が船に上がろうとすると女が浮き上がってくるのが見えた。たまらず曾爺ちゃんは思わず目を背けた。
曾爺ちゃんは甥っ子が船に上がるやいなや、エンジンをかけて全力で逃げ出した。
甥っ子が不思議そうに何があったのか聞いてきたが、「なんでもない。気分が悪なっただけや」とごまかした。
無事に港に帰り、甥っ子を一人で先に家に帰した。曾爺ちゃんは怖くて足が震えて船からすぐに降りれなかった。
どうにか気持ちが落ち着いて船から降りると、全身が海に落ちたみたいにグショグショになっていたそうな。

コメント
コメント一覧
瀬戸内海に住んで270年になる俺の目は誤魔化せないぞ
早く成仏してクレメンス
面白かった
つまり、昔戦争の最中で亡くなった方々なのかな。モンペ姿って言ってたし…。
実際は幻覚だろうけど
日本昔話かよwって吹いたwww
歴史の知識とリサーチが足りなかったんだよ
コメントする